花なんてどうでもいいです
もともと、花やくだものなんてどうでもよかった、キャベツ太郎や室外機の方が大事であった。
家で農家をやっている人と同じ職場でアルバイトをしていると、いつも余ったぶどうや柿やオクラやトマトをもらう。ツルツルの野菜やくだものを貰うのがこんなに嬉しいなんて。
私は料理をしたことがなかった。米に醤油をかけて食べるくらいしかなかった。しかしトマトやオクラをもらえば、醤油をかけてマヨネーズをかけてチンする(これは料理)。あたたかいし、料理した野菜、最高。自分のことをお母さんかと思ってしまう。
私にとってのおふくろの味はモスバーガーだが、モスバーガーのサラダに入っている本当だと思っていたパプリカは、もらったパプリカに比べるともう、赤いアリとかみたいだった。泣けますね。それでも私はモスバーガーを愛しています。
皆さんも一度ツルツルの野菜をご覧になってみては?
深夜にどうしても貰った柿を食べたくなり、適当に切って動物のように食った。喉がかわいたが、この家には飲み物がない。
10月27日、キンモクセイがかなり咲いていた。
「キンモクセイがめちゃくちゃくさいゴミの匂いの花じゃなくて本当に良かったです」と言いながら店の旗を片付ける。農(家をやっているバイト先のお姉)さんはよくわからない感じで笑っている。落ち葉とドングリを踏みしめてキンモクセイの枝を一本バキッと折ってポケットにつっこんだ。あとは店内の後片付けをしてアルバイト終わりというところだった。
店の中に戻ると、キンモクセイの枝を盗んだことがすぐ農さんにバレた。
農さんは貸してごらんと言い、ティッシュを湿らせて枝の先をつつみ、アルミホイルでカバーしてチラシでお花屋さんみたいにくるっと包んで渡してくれた。
私はすぐにこの動作ができるということがとてつもなくカッコいいことのように思えた。
リュックの中がいい匂いになって、帰りのバスを待ちながらも何度も鼻をうずめて嗅いだ。
帰ると玄関にある棚の上にそれを置いてまた嗅いで置き、夜のバスに乗って私は出かけた。
母から花瓶に入れといたよというメッセージが来ていた。
帰ってくると11月であった。出かけ先で私はりんご飴を四つも食べていた。
キンモクセイは枯れていた。バイト先の近くの木ももうにおわなかった。
店のCDをクリスマスソングに変えた。